【専門家が解説】筋トレBIG3の効果と、初心者がやるべき本当の理由

ジムでトレーニングに励む方々を拝見していると、鏡の前で熱心にアームカール(腕のトレーニング)を行ったり、腹筋マシンを何度もこなしたりしている姿をよくお見かけします。特定の部位を鍛えたいというお気持ちは、とてもよく分かりますし、その努力は素晴らしいものです。
しかし、もしあなたが「もっと効率的に、最短ルートで体全体を変えたい」と願うのであれば、少しだけお待ちください。もっと優先して取り組むべき、トレーニングの「王道」が存在するのです。
今回は、なぜ私たちプロのトレーナーが、口を酸っぱくして「BIG3(ビッグスリー)」の重要性をお伝えするのか。その科学的根拠に基づいた絶大な効果と、特にトレーニングを始めたばかりの方にこそ実践していただきたい本当の理由を、詳しく解説していきます。
まず知っておきたい、筋トレの基本「コンパウンド種目」とは?
BIG3のお話をする前に、まず「コンパウンド種目」という大切な言葉を覚えておきましょう。
・コンパウンド種目(多関節運動): 複数の関節と、多くの筋肉を同時に使って行う運動のことです。スクワットや懸垂などがこれにあたります。
・アイソレーション種目(単関節運動): 一つの関節と、特定の筋肉だけを狙って鍛える運動のことです。腕のアームカールや、脚のレッグエクステンションなどがこれにあたります。
これを会社組織に例えるなら、コンパウンド種目は、複数の部署が連携して会社全体を成長させる「大規模な新規事業プロジェクト」です。一方、アイソレーション種目は、そのプロジェクトを構成する一つの部署の「専門的な作業」と言えるでしょう。
もちろん、専門的な作業も重要ですが、会社全体を大きく成長させるためには、まず大規模なプロジェクトを成功させることが不可欠です。トレーニングにおいても、まずは体全体を効率よく成長させるコンパウンド種目に取り組むことが、理想の体への最も確実な近道となります。
なぜBIG3は「トレーニングの王道」なのか?その絶大な効果
そして、数あるコンパウンド種目の中でも、最も重要で、最も効果的なのが、スクワット、ベンチプレス、デッドリフト。私たちが敬意を込めて「BIG3」と呼ぶ、この3つの種目です。これらが「王道」と呼ばれるのには、明確な理由があります。
1. 全身の筋肉を、一度に、効率よく動員できる
BIG3は、それぞれ特定の部位を鍛える種目だと思われがちですが、その本質は全身運動です。一つの種目で、非常に多くの筋肉を協調させて重いウエイトをコントロールするため、トレーニング全体の時間を短縮しつつ、高い効果を得ることができます。
2. 体を成長させる「成長ホルモン」などの分泌を促進する
科学的に見ても、BIG3のように重い重量を扱い、多くの筋肉を動員するトレーニングは、筋肉の成長を促す「成長ホルモン」や、意欲や力強さの源となる「テストステロン」といったホルモンの分泌を、体内で最大化させることが分かっています。これらのホルモンが全身に行き渡ることで、BIG3で直接鍛えていない部位の筋肉の成長にも、良い影響を与えると言われています。
3. 日常生活やスポーツに活きる「本物の使える筋力」が身につく
マシンに固定されて行うトレーニングとは異なり、BIG3は自身の体でバランスを取りながら、正しい体の使い方を習得する必要があります。ここで養われるのは、体の連動性と、強力な体幹に支えられた「機能的な強さ」です。物が楽に持てる、姿勢が良くなる、スポーツのパフォーマンスが向上するなど、あなたの日常のあらゆる動作の質を確実に高めてくれます。
4. メンタルを鍛え、自信をもたらす
重いバーベルに挑戦する際の集中力、そして、以前は持ち上げられなかった重量をクリアした時の達成感は、何物にも代えがたい経験です。BIG3は、肉体だけでなく、目標に向かって努力し、それを乗り越えるという成功体験を通じて、あなたの精神的な強さと自信をも育んでくれます。
【BIG3各種目の特徴と主な役割】
それでは、3つの種目それぞれが持つ役割と魅力をご紹介します。
1. スクワット:キング・オブ・エクササイズ
「しゃがんで、立つ」。この人間にとって最も基本的な動作を強化するスクワットは、まさに「トレーニングの王様」です。下半身全体を強靭にすることはもちろん、重いバーベルを担いで体を安定させるためには、腹筋や背筋といった体幹の強さも不可欠。その効果は下半身に留まらず、全身に及びます。
2. ベンチプレス:上半身の強さの指標
上半身の「押す力」を総合的に鍛える代表的な種目です。分厚い胸板、たくましい肩、太い腕といった、男らしい上半身づくりに最も効果的なトレーニングの一つとして知られています。正しいフォームで行うことで、上半身の筋力と安定性をバランス良く向上させることができます。
3. デッドリフト:最も原始的で、最もパワフルな動き
「床に置いてある(Dead)ウエイトを持ち上げる(Lift)」という、非常にシンプルな動作ですが、その効果は計り知れません。これは腰のトレーニングではなく、体の裏側全体(広背筋、脊柱起立筋、お尻、もも裏)を根こそぎ鍛え上げる、究極の全身連動トレーニングです。正しく行えば、腰痛を予防する強靭な体幹と、美しい後ろ姿を手に入れることができます。
初心者が安全にBIG3を始めるための3つのルール
ここまで読んで、「ぜひ挑戦してみたい!」と感じた方に、安全に、そして効果的にBIG3を始めるための、3つの大切なルールをお伝えします。
ルール1:正しいフォームを最優先する
プライドは一旦忘れて BIG3は効果が高い分、フォームを間違えると怪我のリスクも伴います。特に最初は、重さにこだわる必要は全くありません。バーだけ、あるいはさらに軽い重量で、専門家の指導のもと、完璧なフォームを体に覚え込ませることに集中しましょう。「昔はもっとできたはず」というプライ観は一旦忘れて、謙虚な気持ちで学ぶ姿勢が、結果的に最も早く成長する秘訣です。
ルール2:フリーウェイトゾーンの雰囲気に臆さない
ジムの奥にある、バーベルやダンベルが並んだフリーウェイトゾーン。猛者たちが集うその雰囲気に、気後れしてしまう気持ちも分かります。ですが、どうぞご安心ください。周りの人たちは、あなたが思っているほど他人のことを見ていません。誰もが、自分自身のトレーニングに集中しているのです。堂々と、そのエリアに足を踏み入れてみましょう。
ルール3:最高の近道は、専門家に教わること
これが、私たちが最も強くお伝えしたいことです。BIG3の正しいフォームを独学でマスターするには、多くの時間と試行錯誤が必要で、怪我のリスクもつきまといます。最初の数回だけでも、私たちのようなパーソナルトレーナーから、マンツーマンで正しいフォームの指導を受けること。 それは、安全と効果を最大化し、長期的に見れば時間もお金も節約できる、最も賢明な「自己投資」です。
まとめ:王道を知ることが、理想の体への最短ルート
筋力トレーニングの世界には、様々なテクニックや流行がありますが、時代を超えて受け継がれる、揺るぎない「王道」が存在します。BIG3こそが、その王道の中心にあるものです。
小手先のテクニックを追い求める前に、まずは体の「幹」となるBIG3に、愚直なまでに向き合ってみてください。 それは、あなたの体を劇的に変えるだけでなく、自信や精神力といった、人生を豊かにする、かけがえのないものを与えてくれるはずです。 フリーウェイトゾーンの扉の先には、きっと新しい世界があなたを待っています。